a day

ハローでグッバイな

銀のスコップ <追記あり>

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近所にMちゃんという小学2年生の女の子がいる。

その子は幼稚園のときから、毎日ひとりで公園にいる。土曜日も日曜日も、ほぼ一日中。ずっと公園に居るから、肌は真っ黒にやけ、長い髪の毛はぼさぼさ、身なりは綺麗ではない。

ぽつんと居るわけではない。公園に来る子来る子に、一緒に遊ぼうと誘い、来た子が持っている自転車に乗り、おもちゃを使い、活発に遊ぶ。

水筒を持っている子がいたら、「飲み物ちょうだい、ちょっとちょうだい」とせがむ。よそのお母さんがいたら、抱っこしてくれとねだる。

 ここらへんでは有名になり、あの子には気をつけたほうがいい、と噂が立つ。行き先知られたらついてくるよ、とか、家を知られちゃいけないよ、あがりこんでくるから、とか。わたしは知らない方だと思うけどそれでもたくさん聞いた。

どういうおうちなのか、詳しくは知らない。両親は揃っている。だけど、ほったらかされていることはわかる。

 

こないだ、ちょっとした事件があった。息子がスコップを公園に持っていってた。子供用のではなくて、園芸用の銀色のスコップ。

その日はたくさんの子供が遊んでいて、スコップは、いろんな子が使い、まわりまわっていた。あの先のとがった重いスコップは、いつもなぜか子供たちに人気だ。

帰ろうと思ったときに、スコップが見当たらなかった。いろんな子が探してくれた。最終的に、Mちゃんが使っていたよという話になった。そばにいたよそのお母さんもそれを教えてくれた。

Mちゃんと一緒に遊んでいた男の子たちが、銀色のスコップはどうしたんだと聞いてくれた。するとMちゃんは、家に持って帰ったというのだ。

えっ・・・!である。

しかも「あれはわたしので、パパに買ってもらったんだもん」、という。

男の子たちは、いっせいに、「ウソつくな、スコップはあの子のだよ!」と問いただした。低学年の男の子は、正義感というか、ウソとかずるいを許さないところがある。

何人もの男の子たちに責められて、それでもMちゃんは「自分の名前が書いてあったし!」と平然と言う。強い。

 えーー…どうしたものか。どうしよう。たぶん、銀色スコップが2本あったとも思えない。

そこへよそのお母さんが来て、「Mちゃん、とりあえずそのスコップ、持ってきてくれるかなぁ?見たら、誰のかわかると思うから。もしかしたらMちゃんの勘違いかもしれないでしょ?」とテキパキと言ってくれた。

なるほど・・・と思うわたし。なんて上手な言い方だ。

小さな声で「…わかったよ」と言い残して、Mちゃんは駆けていった。

「いまごろ慌てて名前書いてるかもね~」とテキパキお母さんは言う。

 

…いやいや、ほんとに名前書いて持ってきたらどうすんだ。 いくらうちのだとわかったとしても、「それ、さっき書いたんでしょ?」と追及することができるだろうか。ドキドキしながら待っていた。ふつうに持ってきてくれるといいんだけど…と思いながら。

 

…でも、結局Mちゃんは、公園に帰ってこなかった。

持ってこれなかったんだろう。みんなの前でつるし上げられるようなものだ。スコップを前に、膝を抱えてるMちゃんの姿が思い浮かんでしまった。いや実際はスコップ放り投げて、ゲームでもしてるかもしれんけど。

 

脱力感と、すこしほっともしてて、複雑な気分だった。公園の人みんなにも、モヤモヤ感が漂ってた。

「名前を書いてなかったうちが悪かったから。お騒がせしました~」と謝って、その場を後にした。ほんとに、名前を書くいろんな意味を知る。

 

家に帰ってじわじわと、これでよかったのかなという気持ちが湧いてきた。ちゃんと家まで行き、追及して取り返したほうがよかったか?それが筋だったか?という気もしてくる。

スコップが惜しいわけではない。Mちゃんはそれでいいんだろうかと思って。ちょっと叱られても、返したほうが後々すっきりしたんじゃないだろうか、とか。

誰にもみつからないように、家でこっそり持っているんだろうか。それってずっと胸が痛くないかな。だってまだ2年生だ。

こっそり公園の砂場に返しといてくれるといいのにな。

しめしめ儲けたと、名前を書いて堂々と公園で使っていたら、ビックリだけども。

 

きっとまたこの事が広まって、Mちゃんは更に評判を落とす。えらそうなことはいえないけども、親は何をやっているんだ、と思う。自分の子がこんなことでいいのかな。

いろいろうまく書けないんだけど、その割には長くなったけど、もう、もやっとボールをポイポイ投げたい日だった。

 

<追記 >

花梨さん、トラバありがとうございます。

http://karin.hateblo.jp/entry/2013/07/10/191531

懐かしくて、切なくて、胸がきゅうとなる記事でした。

だれもが、こういう何かしらがあって大人になっていくのだなぁと。

 

きなこさん、トラバありがとうございます。

http://kinako.hatenablog.com/entry/2013/07/11/140345

中学生のあの頃がよみがえる気がしました~。

事件は事件なのに、さわやかな希望を感じた記事でした。