カゴの中
友達から、カブトムシをもらった。
その人のうちは去年飼ってたカブトムシの卵を上手に孵したみたいで、大きな衣装ケースにオスメス10匹ずつくらい居た。成虫になったはいいけど、それだけ居ると世話も餌代も大変らしく、毎日昆虫ゼリーを9個とか、食べてしまうらしい。
なので是非とも貰って欲しい、できるだけたくさんもらって欲しい、ということだったので、オスメス2匹ずつ、計4匹頂いた。
わたしは虫が大の苦手。苦手というより恐怖に近い。あのフォルムを見るだけでゾクゾクしてしまう。穏やかではないが、絶滅してしまえばいいのに…と思ってる。
だけどでも。男の子がいると虫は避けて通れない。ましてやカブトムシなんて、男の子のロマンらしく。
まぁでも。ケースに入ってれば観察してしまう。見てるとそれなりに個性がある気がする。こいつ食い意地張ってるなぁー!とか、アホだろ!とか。生き物はなんでも数匹いると面白い。
夜、ふと物音で目が覚めた。リビングかガサゴソカチカチブンブン、音がする。カブトムシって、すごい音すんだな…と思いつつまた寝た。
朝、なぜか台所の床にメスのカブトムシが居た。素でワサワサ這ってた。
キャー!!なんで〜〜!?
だってフタは閉まってるはず…少し空いてるぅぅぅ…!!
いや、昨日は閉めた。押し上げて開けた?昨日の物音はそれ?大脱走?
台所に居るカブトムシはなんだかすごい違和感で、ゴキブリ以上にものものしく、気持ち悪かった。早々に捕まえてもらう。やれやれ。
ハタと気づく。脱走したのは1匹だけかい?虫カゴの土を掘り返して点呼を取る。1匹、2匹、3匹……。
ああ、いっぴき、おらん!!(°_°)
家中大捜索ですよ。棚の下から、冷蔵庫の上まで。決して諦められません!だってどっかで死んでたらヤじゃない?
血眼になって探しに探して、テレビの後ろにとまっているのを見つけました。やれやれやれ。
それ以来、虫カゴのフタには厳重な警戒体制。もう二度と許すまじ。
だけど、そんなに出たいんだなって。考えたらあんな狭い箱で、飛ぶことも出来ずに、繁殖だけして死んでいく、そんな人生って…どうなんだろ。うむ、でも人生ってそんなもんかもしれんが。
だからって、可哀想だから…と林や森に離しても、すぐに、死んでしまうことが多いらしい。意外に樹液って無いらしいのだ。
「たっぷり昆虫ゼリーをあげて、生を全うさせてあげて下さい」、と物の本には書いてあった。
昆虫の王様は、カゴの中の運命。天敵もいないし、下手に外界を知らないから閉じ込められてる感は無いかもしれない。だけどなんだか人間がもてはやして作りあげた哀しい生き物に見えた。